実績紹介

水力発電

田川内発電所 建築・土木施設詳細設計業務委託

2016年度  /  新潟県企業局

業務の概要

本業務は、新潟県企業局が管理する田川内発電所を対象に、経年劣化により老朽化した発電所の大規模改良に伴う土木・建築施設の実施設計を行うとともに、本発電所を再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の適用設備とするために発注者の支援を行うことを目的とした業務です。

発電計画の概要

田川内発電所は、早出川ダムから取水した最大使用水量12.0m3/sをダム直下に位置する発電所まで水圧鉄管により導水し、有効落差70.8mを利用して最大出力7,100kWを発電するダム式の発電所です。
水車は水量に応じて効率の良い角度にガイドベーンを可動させることができ、低落差、大流量に適した立軸カプラン水車を採用し、水車・発電機の支持方式は二床式梁を採用しています。

本業務の設計上の特徴

① 採算性が最も大きくなる発電計画の策定

固定価格買取制度(FIT)の適用に当たっては、共用部を除く、主要な土木設備と電気設備を更新することが条件として定められています。当該発電所の場合、早出川ダムが多目的ダムであり、共用部(取水口・水圧管路等)の更新が不要となるため、採算性が最も大きくなる全面改修の発電計画(新設区分)を適用しています。

② 最小限の取壊しによる全面改修

発電所建屋は、貸与資料より耐震性を有していることが分かったため、既設建屋を流用した発電所の改修計画とし、発電所基礎の取壊しについても主要機器周辺のみの取り壊し範囲にとどめ、経済性及び工期短縮を重視した計画を策定しています。

また、本計画の最大の特徴として、水車・発電機を支持する二床式梁を流用する提案をしています。二床式梁は、水車・発電機の全静止荷重を支持する重要部材であるため、狭隘な施工エリアにおいて新たに二床式梁を設けることや、支持形式をバレル式に変更することは構造的に困難と判断しております。

さらに、水車メーカーへ発電機の重量が既設より重くならないように仕様書に明記するとともに、業務完了後にメーカーから提示された新設機器の荷重条件による構造計算をアフターフォローとして実施し、当初の設計思想が確実に現場に反映されるように心掛けております。

③ 狭隘箇所での施工計画の立案

発電所の改修範囲を最小限としたことで、狭隘な箇所での施工及び資機材の搬入出経路の選定など、施工計画の複雑化が問題となりましたが、詳細な基礎コンクリートの取壊し計画と合理的な資機材の搬入出計画により克服しています。

土木工事の他、建築工事、機電工事も輻輳する中で、各工事の着手及び完了する時期を想定し、時には搬入出経路の変更や、各工種の同時施工を行う環境を整備するなど、作業員の安全を最優先とした施工計画を提案し、無事当該箇所の施工が完了しました。

担当者から

当社として、既設水力発電所を対象に、固定価格買取制度を適用したリプレース事業の設計業務は初めての案件でした。よって、①新設区分の認定を受けるための条件把握、②既設構造物の大部分を流用しながらのリプレース計画、③安全性・経済性・工期短縮を配慮した施工計画など、課題の多さと新設発電所の設計業務との違いに当初は大変苦労しました。

また、業務完了後も発注者様、施工業者様からの相談に積極的に対応し、設計から完成までの一連の過程を経験できたため、設計上だけでなく施工性を考慮した重要ポイントの把握など自身の知見を深めることができました。当該発電所の土木工事の山場が無事完了し、本業務が当社の手掛けるリプレース事業設計業務の先行事例となったことは、苦労の甲斐があったと思っています。

再生可能エネルギーへの関心が高まる中、今後は、更なる技術の改善・改良を行い、お客さまの要望以上の提案に努めていきたいと思います。


第二土木部 大島 翔