県営かんがい排水事業庄川地区 示野発電所実施設計
県営かんがい排水事業として、既設共同用水路から二万石用水幹線水路への分水槽(調圧水槽)に存在する遊休落差を有効利用する農業用発電の計画・設計を行いました。
本発電所は、最大使用水量8.63m3/s、有効落差8.29mにより、最大出力550kWの発電を行うものであり、採用した水中タービン水車の特性から、期別に2パターンの使用水量を設定し、発電最適規模を決定しました。
水路ルートは、分水槽直下の二万石用水幹線水路に分岐管を設置し、水圧管路にて発電所に導水するものとし、途中に流量計室及びバルブ室を配置しました。
本発電所は、既設共同用水路の分水槽に存在する遊休落差を利用して発電し、売電収入を農業水利施設の維持・管理に充当することにより、農業経営の負担軽減を図ることを目的に計画されました。
発電の水利権は、農業用水に完全従属(本来の水利使用に完全に従属し、流量等に新たな影響を及ぼさない水の使い方のこと)しており、発電後の水は用水路に還流されて、かんがい用水として従来どおり利用されます。
本発電所は、住宅地に隣接するため、騒音が少なく、用水路のゴミの流入にも対応できるスウェーデンのITTクリフト社の水中タービン水車を国内で2番目に採用した地点です。
水中タービン水車は、ポンプ形水車の一種で、円筒形のユニット内部には、水車・発電機が一体化されており、シール機構により水中での運転を可能としています。
一体化された水車・発電機は、①円筒形の据付コラムから天井クレーンにて引き出し搬出することにより、工場にてオーバーホールが可能である、②誘導発電機であるため補機が不要で構造が簡易であり、維持管理が容易である、③ラインナップが設定され、比較的安価である、④必ずしも建屋を必要としないなどの利点があります。
上記の利点により、工事費の縮減、並びに従来まで発電事業の経験のない事業者(土地改良区)の維持管理の低減が図られるものとなりました。
売電収入は、減価償却及びポンプ経費などの維持管理に充てられ、離農による組合員の減少や農家経営の悪化が深刻な中、農家の賦課金の軽減に大きく役立っています。
なお、同形式の水車・発電機を採用し、当社が計画・設計を実施した地点として、庄川沿岸用水土地改良区連合の庄川合口発電所及び庄川左岸共同用水路小水力発電所、富山県企業局の庄発電所があります。
担当者から
本発電所で採用した水中タービン水車は、現在は国内メーカーが製造していますが、当時はスウェーデンのITTクリフト社だけが製造していました。
国内電機メーカーがクリフト社の製作責任者をつれて来社された時、自分の英語力の無さに反省するばかりでした。
現土木本部長 今井 保
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