中野放水路 小水力発電施設測量設計
業務の概要
当該発電所建設にあたり、当社では基本設計から実施設計、測量、各種申請資料作成支援を担当しました。
発電計画の概要
庄川用水合口堰堤から取水した用水は、既存の左岸幹線水路を通り、中野発電所を経て中野放水路分水場に到達します。中野放水路分水場では、千保柳瀬口用水や新又口用水等へ分水されるほか、中野放水路を経由して庄川に放水されています。
中野放水路発電所は、中野放水路が有する放水落差を活用した小水力発電で、中野放水路から最大13.00㎥/sを導水し、有効落差4.82mを得て最大500kWの発電を行い、年間の供給電力量は約205万kWhを計画しています。
水車は横軸カプラン水車を採用し、発電機は横軸三相誘導発電機を用いています。
発電使用水量の管理調整は、水槽に設置した水位計の情報を基に水車ガイドベーン開度を自動調整することで調整しています。(水位調整運転)
本設計業務における特徴
①樋門・樋管による庄川への放流
当該発電所は、中野放水路分水場から中野放水路を介して庄川に放流される水を用いて発電するものであり、既得水利権を得ている農業用水に従属して用いるものとは異なるため、発電用水の利用にあたっては、河川法に基づく新規水利権許可の申請手続きが必要となりました。
また、発電に使用した水は、一級河川庄川の本堤防の中に水路を通す樋門・樋管を設けて庄川に放流するため、その構造や堤防護岸などについて国交省と協議・調整を進める必要があり、並行して進めた水利権申請の獲得に1年以上もの期間を必要とする等、多くの労力を必要としました。
②低コスト化への取り組み
水車メーカーの提案を元に、水車に流水遮断機能を持たせることによって入口弁を省略してコストの低減を図りました。
また、半地下式の発電所として発電所上屋を省略し、発電所天井にハッチを設けることで直接機器を搬出入できるようにして所内クレーンを省略するなど、低コスト化を図りました。
③外国製水車の導入
水車は、コスト面や水車設置スペースのコンパクト化などの観点から、チェコ製の縦軸カプラン水車を採用しました。
最大出力500kW規模の水車を日本国内に導入することは、水車メーカーにとっても初の導入であり、竣工式にはチェコの駐日大使が来賓するなど、注目度の高い事例となりました。
担当者から
当該箇所は、既設中野放水路に隣接して水槽を設置するため、施工期間中は既設中野放水路の断水が余儀なくされます。断水に伴い、上流に位置する中野発電所の発電規模を縮小する必要がありますが、関西電力の電力需給計画との関係から断水期間には制限がありました。
このため、限られた短い施工期間との戦いの中、施工業者様とより施工性の高いものへの話し合いと図面修正を行うなど、工事完成ギリギリまで当社が関わりました。
一般に、建設コンサルタントは設計のみを行うのが主流ですが、当該箇所では工事の進捗をつぶさに見ることが出来るとともに、施工業者様と直接協議を進めて行くことにより、施工しやすい設計としてどう配慮すべきかなどについても様々な経験を得ることができました。
また、既設発電所からの放流水とその有休落差を活用した小水力発電といった新しい可能性を発見・実現できたことは大きな収穫だったと感じています。
第二土木部 中野 雅樹
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