関川用水(一期)農業水利事業 小水力発電所積算参考資料作成他業務
業務の概要
本発電所の建設にあたり、当社では施工性、維持管理性等の観点から計画設計の見直しを行うとともに対象工事の積算参考資料の作成を行いました。
発電計画の概要
本発電所を計画した笹ヶ峰ダムは、期別放流量 最大11.559㎥/sを放流するかんがい用水を目的としたダムであり、下流の西野発電所(東北電力㈱)にて発電用としても利用されています。
本発電所は、ダム放流量のうち、最大使用水量3.80㎥/sにて、有効落差33.50mを得て最大出力997kWを発電するダム式発電所であり、年間発電電力量は4,127MWhを計画しています。ダム放流管を既設取水トンネル内に内挿し、ダム放流水を導水、ダム直下にて発電用として分水、発電利用した後、既設の分水槽へ還流するものです。
水車は、横軸フランシス水車を採用しています。
本設計業務における特徴
①狭小なダム後背地への建設を考慮したコンパクト設計
本発電所の予定地は、笹ヶ峰ダムの後背地であり、非常に狭小な土地に発電施設ならびにダム放流設備を設置する必要がありました。
そのため、放流設備に減勢効果が高く、コンパクトな配置が可能となるコーンスリーブバルブを採用することとしました。更に、水車の回転数を下げることにより吸出し高を確保し、水車設置高を高くすることで水車を地上フロアに設置し、発電所建設における掘削範囲の低減を図ることで、ダム提体への影響の緩和を図るとともに施工ヤードを確保しました。
②施工工程の短期化
本発電所地点は、妙高杉ノ原スキー場の更に上に位置する標高1,200m近い高地であり、冬期は半年以上雪で閉ざされる場所です。また、本地点は笹ヶ峰ダムの取水トンネル下流地点で分水槽が配されており、西野発電所(東北電力㈱)への分水も行われていました。
そのため、既設分水槽をそのまま利用することで改築が必要な施設を減らし工期の短縮を図るとともに、下流の西野発電所への分水方法変更による運転管理の影響を小さくしました。
③景観・立地条件に配慮した発電所
本発電所地点は国立公園内であり、笹ヶ峰ダム上部より施設全体を一望できる位置です。また、標高1,200m近い高地であり、冬期には多いときで5mの積雪が想定される場所でした。
そのため、発電所外観については景観に十分配慮した意匠・配色とするとともに、冬期メンテナンスのための出入り口を配置、発電所内部にクレーン設備を具備することで維持管理性の向上を図りました。
担当者から
発電用水を取水する関川は一級河川であるとともに、本発電所地点はダム後背地であることから、施設の建設にあたり関係機関との協議が必要となりました。そのため、発注担当者と協力し協議資料の作成を行いましたが、河川管理者に納得していただくための資料作成が非常に苦労しました。
施設建設中も施工段取りや変更など様々な対応が必要でしたが、特に建設地点が狭小であったということで、施工順序や施工計画が非常に重要であり、今後も水力開発の設計を行っていくうえで、大変勉強になりました。
第二土木部 山本 規人
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