仁右ヱ門用水発電所建設事業 測量・実施設計
当該発電所建設にあたり、当社では実施設計、測量、各種申請資料作成支援、を担当しました。
発電計画の概要
本発電所は、最大使用水量2.40m3/sにて水槽(ヘッドタンク)から延長約1,400mの水圧管路で発電所に導き、有効落差24.48mを得て最大460kWの発電を行うもので、年間の供給電力量は約350万kWhとなっています。
発電は、水圧管路始点の水槽(ヘッドタンク)に水位計を設置し、水槽水位が一定となるよう、水位計の情報を基に水車ガイドベーン開度を自動調整することで行っています。(水位調整運転)
水車は横軸フランシス水車を採用し、発電機は横軸三相誘導発電機を用いています。
本設計業務における特徴
①農業用水の落差工を統合して発電
仁右ヱ門用水には複数の落差工が設置されています。一つ一つの落差工の落差は微々たるものですが、これを統合(最上流から最下流まで管路で導水)することにより20mを超える落差を得ることができました。
県内で近年、主流となっている落差統合式の発電所の先駆けとなった発電所かと思います。
②水圧管路のコスト低減
水圧管路(土中埋設管)の延長が1,400mと長いことから、この部分のコスト低減が課題でした。水圧管路に樹脂製のFRPM管を採用することで、建設コストを抑えました。
また、埋戻し材については資源の有効活用とコスト低減を図る観点から、再生骨材を用いるなど、環境への配慮と工夫を行いました。
担当者から
農業用水に存在する落差工を統合し、発電を行う形式の先駆けとなった発電所であり、県営としては日本で初めて農業用水を利用した水力発電所となっています。
よく土木は、経験工学である(経験がモノを言う)と言われていますが、水力発電においては、実際に運転を開始してからの維持管理性についても配慮をする必要があり、より経験工学的な側面が強いと思います。
また、水力発電の設計には、土木・機械・電気など多岐に渡る分野についての知識が必要であるとともに各種メーカーとの連携が重要になります。このことに加えて各種申請機関との協議や調整を行う必要があります。
これらのことから、水力発電に携わる技術者に求められる一番の能力は総合的にコーディネートできる能力であると思いますが、当時の私がそのような素養を備えているわけもなく、非常に苦労しました。
これを契機に個人の力だけでなく、チーム一丸となって協力して行くことが重要だと痛感しました。
第二土木部嶋津 昌幸
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